障害者歯科とは?どのように診療するの?

障害者歯科とは

障害者歯科とは、理由があり一般の歯科医院では安全に診療を受けることが困難な方を対象としています。
例えば何らかの障害や自閉症、てんかん、高血圧や糖尿病のある場合などです。
また、歯科に対する恐怖心が強く嘔吐反射が強かったり、暴れてしまって治療が難しい場合に利用されることもあります。
一般歯科にはないような設備を用意し、様々な配慮をしながら診療を行っています。

専門医が行う障害者歯科診療とは?

安全な環境で診療が受けられるように、専門医が行っている障害者歯科とはどのようなものなのでしょうか。
一般歯科と大きく異なる点は、対応するためのグッズや設備の用意が整っているということです。主に次のような違いがあります。

①歯科に慣れることから始める

歯科医院が好きという方は少なく、恐怖心があったり苦手だと感じている方がほとんどです。また口の中の治療は目で見ることができず、何をされているのかも良くわかりません。余計に不安に感じてしまうでしょう。一般歯科でも、まず歯科に慣れてもらうことから始めますが、暴れてしまう場合などはやむを得ずネットなどを使用することもあります。
しかし障害者歯科では、より患者さまの状況に寄り添った対応が可能です。視覚支援カード・写真やイラストなどで治療内容が理解できるようにして不安を軽減します。さらに患者さま一人ひとりの心身の発達に合わせたトレーニンングで、歯科医療が受け入れられるようにサポートしていくのです。

②必要に応じて鎮静薬を使用する

患者さまの状況によっては「笑気ガス」や「精神鎮痛薬」などの鎮静薬を用いることもあります。これは気持ちを落ち着かせ、できるだけリラックスしてもらうことで歯科医療に対する不安を取り除けるように使うものです。

③全身麻酔法

上記のような方法でも難しい場合は、麻酔科による全身麻酔を行い、無意識の状態で診療を行います。

④安全確保のための備えがある

患者さまが治療中に突然動いてしまうと、器械で口の中を傷つけてしまうなどの危険が伴います。それを防ぐため、一般歯科では準備されていないような専用のクッションなどを利用して患者さまの安全確保に努めています。

⑤食事についてのアドバイス

食べやすい食事の姿勢や、食事の内容・飲食の仕方の指導も行います。

 

このように一般歯科では限られてしまうような環境が整えられているため、より患者さまに寄り添った歯科治療の提供が可能です。

障害者歯科診療での注意点

誰にでも共通して言えることですが、お口の健康のためには毎日の歯磨きがとても重要です。しかし何らかの障害があって、自分で磨くことや上手に歯ブラシを動かすことが難しい場合もあるでしょう。そのような時は、ご家族や周りの方がお口のケアをサポートしてあげる必要があります。ここではご家族をはじめとする周りの方が口腔ケアをする時のポイントについてお伝えします。

【基本的なポイント】

  • 何かをする前には声をかけ、側で見守る
  • 絵やカード、歯の模型・鏡などを用いて伝わるように工夫してみる
  • 歯磨きができた時は褒める
  • 全体を毎食後きれいにするのではなく、部分的に分けるなどしても1日で磨ければOK
  • 機嫌の良い時に行う
  • 自立を促すよう、できるだけ本人にさせる

【歯磨きの方法】

①手添え磨きをする

上手く磨けない部分は、手を添えて一緒に磨いてあげましょう。

②介助磨きをする

自分で磨くことが難しい場合は、介助者が磨いてあげましょう。

【介助磨きのポイント】

  • 歯の外側は、噛んだ状態で磨く
  • 歯の内側は、バイトブロック(割り箸にガーゼを巻いたもの)を用いて噛まれないようにする
  • 噛み合わせの部分もバイトブロックを使って、唇や頬の粘膜などを噛まないよう気を付ける
  • 見本を見せて一緒に磨く

歯磨きを嫌がる時は、まず原因を考えてみましょう。
硬い歯ブラシや開いた歯ブラシでは歯ぐきを痛めてしまう可能性があるため、柔らかい歯ブラシを使うようにします。口の中が敏感で、嘔吐反射が出やすい場合には小さめの歯ブラシが有効です。歯磨き粉は使わなくても問題ありません。
また唇が乾燥していると引っ張られた時に痛みを感じたり、切れてしまうこともあります。そのような時は、ワセリンなどの保湿剤をつけてから磨くと良いでしょう。
さらに眠い時などは嫌がる可能性が高くなるため、眠くなる前の機嫌の良い時に磨くのもポイントです。

さいごに

歯科診療は、様々な人にとって必要なものです。虫歯になった時などだけではなく、お口の健康を保つためには日頃のケアと、歯科医院での定期検診が欠かせません。
障害者歯科では、一般歯科での対応では難しい場合でも歯科診療が行えるように色々な準備がされていることがおわかりいただけたと思います。近くの歯科医院では難しいから…と遠ざかってしまいがちな方もいらっしゃるかもしれませんが、是非お住まいの地域で障害者歯科診療を行っているところを探してみてください。困ったことやお悩みがありましたら、一度相談してみると良いでしょう。