歯科医院では歯のクリーニングや虫歯の治療などによって、様々な異物が空気中に飛散しやすいです。そして、目に見えないくらい小さい飛散物の中には、感染性のある細菌やウイルスが含まれていることもあります。
多くの歯科医院では、こうした飛散物による院内感染を予防するために「口腔外バキューム」を導入しています。
この記事では口腔外バキュームの効果やメリット、口腔内バキュームとの違いについてご紹介します。
院内感染予防に効果的?口腔外バキュームとは
口腔外バキュームはどうやって使う?
口腔外バキュームは歯科治療中に患者さんの口の外で飛散物を吸引する大型の装置です。各診療台に一つずつ設置し、吸引口を患者さんの口の近くに置くことで、治療中に口の外へ出た小さな飛散物を瞬時に吸い込みます。また、入れ歯や被せ物を口の外で削るときも切削片が飛ばないよう口腔外バキュームを利用します。
院内感染予防に効果がある
口腔外バキュームはエアロゾルや粉塵が空気中に飛散するのを防ぎ、院内感染のリスクを軽減します。
エアロゾルとは空気中に浮遊する唾液や血液の混ざった霧状の水のことです。歯科治療中は水を使った処置が多く、唾液や血液の混ざった霧状の水や歯や詰め物を削ったときの粉塵が口腔外へ飛散します。また、入れ歯や被せ物の調整のときも金属片や唾液を含む粉塵が生じます。
唾液や血液には感染性のある細菌やウイルスが含まれている恐れがあるため、こうしたエアロゾルや粉塵は空気中に飛散する前に除去が必要です。
口腔外バキュームは吸引力が強く、目に見えない小さな飛散物も逃しません。そのため、院内に感染物質が広がるのを防ぎ、クリーンな診療空間を守ります。
口腔内バキュームとの違いは?
口腔内バキュームは歯科治療中に口の中に溜まる水や切削物、唾液を吸い取る機械のことです。口腔内バキュームは除去した歯の汚れや切削片を患者さんが飲み込んでしまわないように、施術する歯の近くで吸引します。
口腔内バキュームは比較的大きい粉塵や目に見える水を除去しますが、小さな粉塵や霧状になったエアロゾルは取り逃してしまいます。
そのため、口の中で感染物を除去する口腔内バキュームと、取り逃したエアロゾルや粉塵を口の出口でキャッチする口腔外バキュームを併用することが感染対策にとって非常に重要です。
感染リスクを防ぐ!口腔外バキュームのメリット
口腔外バキュームには次の3つのメリットがあります。
- 新型コロナ対策にも!院内感染を予防できる
- 粉塵による健康被害を防ぐ
- 匂い対策にも有効
①新型コロナウイルス対策にも!院内感染を予防できる
口腔外バキュームは治療で発生した感染性のあるエアロゾルによる院内感染を予防します。また、口腔外バキュームは歯科医療現場における新型コロナウイルス対策としても有効とされており、歯科治療によってウイルスが院内に広がらないようにしています。
エアロゾルは目に見えないほど小さいものもあり、広範囲に飛散し、空気中にしばらくとどまります。口腔外バキュームを併用して歯を切削した場合、口腔内バキュームのみだった場合と比較して、術者のマスク・眼鏡、診療室の空気中から検出された患者さんの口腔レンサ球菌の細菌数はおよそ9割減少したという報告があります。
口腔外バキュームの利用によってクリーンな環境を保つことで、治療を受ける患者さんだけでなく、他の患者さんや医療従事者も安心して治療に臨むことができます。
②粉塵による健康被害を防ぐ
歯科治療では歯の切削片や金属片などの粉塵が生じ、こうした粉塵は吸い込むと体に有害です。
口腔外バキュームは口腔外に飛散した粉塵も吸い込むことで、患者さんが飲み込んだり、お顔へ飛び散ったりすることを防ぎます。
③臭い対策にも有効
歯科治療では歯を削ったり、歯茎を切ったりするときに独特の臭いがします。また、歯科で使用される薬剤の臭いが苦手という方もいるでしょう。
口腔外バキュームは口元で吸引するため、こうした嫌な臭いも一緒に除去します。治療中の臭いが気になる方や治療後に服に臭いが移るのが嫌な方にも口腔外バキュームは有効です。
さいごに
口腔外バキュームは感染源となるエアロゾルや飛沫などを口の外で吸引し、院内の空気汚染を防ぐ効果があります。
治療に唾液や血液などが伴う歯科医院では、院内感染を予防するために口腔外バキュームの他にも次のような取り組みを行っています。
〈歯科医院での感染対策〉
- 使い捨ての紙コップやエプロンを使用
- 専用機器による器具の滅菌を徹底
- 患者さんごとに治療後の診療室を消毒
- 換気や空気清浄機による空気汚染の予防
歯科医院では様々な角度から感染対策を徹底することで、患者さんに安心して治療を受けていただける環境づくりに努めています。