気になるインプラント手術後の痛みと腫れ
インプラント治療は、顎の骨にインプラント体と呼ばれる人工歯根を埋め込む外科的手術を必要とします。術後の痛みや腫れはどの程度でどのくらい続くのか気になる方もいるでしょう。
痛みや腫れの程度は個人差が大きく、人によって痛みや腫れが全くでない人もいれば、痛みや腫れに加えて内出血を起こす人もいます。
ここではインプラント手術中、術後に伴う痛みや腫れはどの程度なのか、どのくらい続くのかの目安をご紹介します。
術中
術中は局所麻酔や静脈内鎮静法を用いるため、痛みを感じることはほとんどありません。ただ、注射針を歯茎に刺すときはチクッとした痛みを感じやすいです。そのため、表面麻酔をしたり麻酔薬を人肌に温めておいたりなど、なるべく痛みを抑えるよう工夫する歯科医院もあります。針を刺すときの痛みが苦手な方は、このような処置をしてくれるか事前に確認しておくと良いでしょう。
術後すぐ
痛みが気になるのは、術後3~5時間後の麻酔が切れたあと、傷口から痛みを感じ始める人がほとんどです。術後は鎮痛剤と抗生物質を処方することが多く、薬が効いている間はあまり痛みを感じることはありません。
術後2~4日目
痛みとは異なり腫れは2~4日目にピークを迎え、約1~2週間かけて徐々に落ち着いてきます。ただ個人差が大きいものなので、中には1週間程度痛みや腫れが続く人もいます。
特に顎の骨の量や厚みが少なく、骨の移植や骨を造る処置を行った場合や、埋入するインプラントの本数が多い場合は手術の範囲が広くなり、やや強めの痛みや腫れに加えて頬や顎、首元に内出血を起こす可能性もあります。
術後7~10日目
傷口が回復し、痛みや腫れはおさまってきますが、中には縫った糸で歯茎に違和感を覚えたり、それを痛みとして感じたりする人もいるでしょう。この場合、抜糸すると改善します。術後7~10日目で抜糸をすることが多く、その際に歯茎にチクチクと痛みを感じることがあります。痛みが強い場合は、表面麻酔や局所麻酔をしてから行います。
インプラント手術後に注意しなければならないこと
インプラント手術後の当日から抜糸までの間は、以下の点に注意しましょう。
処方された薬は指示通りに飲む
インプラント治療前後に鎮痛剤や抗生物質が処方されます。これらの薬は痛みや炎症を抑えたり細菌感染を予防したりするための薬です。
鎮痛剤は痛みが出たときだけ飲む頓服薬として、抗生物質は決められた回数飲む内服薬として処方されます。必ず歯科医師の指示に従って服用しましょう。
運動・飲酒・入浴は控える
術後2~3日程度は激しい運動・飲酒・熱いお風呂での入浴は控えましょう。これらは血行を良くする効果があり、出血や腫れの原因になることがあります。
口腔内を清潔に保つ
口腔内を清潔に保つことは、細菌数を減らし感染リスクを抑えるために大切なことです。手術部位の歯磨きは、術後7~10日間避けるように指示されますが、それ以外の部分はしっかり歯磨きしましょう。また、洗口剤などを処方する歯科医院もあり、積極的に活用したほうが良いです。
タバコは節煙または禁煙する
喫煙者の方はインプラント治療を受ける前に、節煙や禁煙指導を受けることがあります。タバコを吸うと毛細血管が収縮して歯茎の治りが悪くなること、インプラント治療後の予後にも悪影響を与えることから、できれば禁煙が望ましいです。
手術部位は舌や指で触らない
抜糸をするまでの約7~10日間は、術部を舌や指で刺激しないように注意しましょう。これは、傷口が開き、治りが悪くなる可能性があるためです。また、ブクブクうがいといった強いうがいも避けたほうが良いです。
こんな時はすぐに歯科医院へ相談しましょう
以下のような場合はインプラントやその周辺組織にトラブルが起きている可能性があります。我慢せず歯科医院に連絡し、受診しましょう。
鎮痛剤が効かないくらい激しい痛みがある
鎮痛剤を服用しても激しい痛みがある場合は、薬が身体に合っていない可能性や、インプラントの周辺組織にトラブルが起きていることが考えられます。
症状が変わらないまたは強くなる
痛みや腫れのピークである術後4日を過ぎても症状が変わらない場合や、強くなる場合はインプラントの周辺組織にトラブルが起きている可能性があります。
上顎の手術後に鼻血がでる
上顎の奥歯にインプラントを埋入したときや、「ソケットリフト」や「サイナスリフト」で骨の厚みを出す処置を行ったときは、術後に強く鼻をかむと鼻血が出ることがあります。
少量の鼻血では経過観察になることがありますが、持続したり大量に出血したりする場合は歯科医院に連絡し、受診しましょう。
出血が止まらない
出血はインプラント手術をしてから1日程度で止まります。しかし、翌日になっても流れるように出血する場合は、血管が傷ついていたり傷口が開いていたりする可能性があるため、速やかに受診しましょう。
下顎の手術後に顔にしびれがある
下顎には、「下歯槽神経」と呼ばれる神経が通っており、手術中に傷つけてしまうと麻痺やしびれが起きます。
早期に対応することで改善する可能性は高くなるため、インプラント手術の翌日に麻痺・しびれがある場合はすぐに受診しましょう。
さいごに
インプラント手術後に伴う痛みや腫れは、術後3~4日ほどでピークを迎え、1~2週間ほどで徐々におさまる一過性であるため、過度に心配したり不安になったりする必要はありません。
しかし、痛みが強くなったり、大量に出血したり、麻痺やしびれがある場合はインプラントやその周辺組織にトラブルが起きている可能性があります。その場合、我慢せず速やかに歯科医院に連絡し、受診しましょう。
なお、インプラントは入れたら終わりの治療ではありません。トラブルの予防や長持ちさせるためにもアフターメンテナンスをしっかり行いましょう。
編集後記
編集後記では毎回、編集部のおすすめする全国の歯科医院さんをご紹介させて頂きます。
※本編とは直接関係ありません
難症例の「インプラント治療」にも対応することができる医院さんです。日本人の骨に合わせた日本製メーカーのプラトン・インプラントを採用されています。また、できる限り削る量を抑え、痛みの少ない治療を心がけていらっしゃいます。インプラント治療においても、できる限り歯ぐきの切開や剥離をせず、出血や腫れ、痛みを軽減させるなど、低侵襲な治療に取り組まれています。