笑ったり、ものを食べたりするときにちらりと見える口元。あなたは自分の口元に自信がありますか?
もしかしたら汚いのではないかと気になってしまう方は、実はとてもたくさんいらっしゃるようですね。
あまりにも気になって、会話や食事を心から楽しめなくなってしまうなど、歯は心理面にまで影響を与えてしまうことがあります。
では、どうして汚く見えてしまうのでしょうか?そして歯を綺麗にするためにはどのようなことが出来るのでしょうか?
多くの人が気にかけている、「歯の白さ」「歯並び」「歯の形」の3つの要素に分けて、歯医者さんではどのような方法が取られているのかをご紹介します。
歯が汚く見える原因
歯の白さ
『綺麗な歯』というと、芸能人のような白い歯を思い浮かべる方も多いかと思います。
白い歯は、顔全体を明るい印象にし、若々しく知的な雰囲気を与えるといわれています。
日本人は人種的な要因や、歯のケアへの意識が欧米より遅れていることから、歯の色が濃い傾向があるといわれています。
遺伝的なものなど仕方がない要因もありますが、それ以外に歯に色がついて見える原因として次のようなものが挙げられます。
ステイン(着色汚れ)
ステインはお茶やコーヒーなど色の濃い食品に含まれる着色成分や、たばこのニコチンが唾液に含まれているカルシウムなどの成分と反応してできる汚れのひとつです。
出来てすぐの汚れは歯磨きで簡単に取り除くことが出来ますが、磨き残しがあると少しづつ蓄積して、時間が経てば経つほど取れにくくなっていきます。
虫歯の治療跡
虫歯の治療で歯を削った後詰める、詰め物や被せ物の材質によっては周囲の歯よりも色が濃く見えることがあります。
また、こうした人工物は時間が経過すると色がついてしまうことがありますし、経年的な劣化で歯とのギャップができることもあります。
神経が死んでいる(歯髄がない)
虫歯が進行して、細菌が神経(歯髄)まで感染してしまった場合や、歯に強い衝撃が加わった場合には神経が死んでしまうことがあります。
神経が死んでしまった歯は、血液や水分の循環が止まり代謝が落ちてしまうため、黒ずんでしまうことがあります。
歯並び
歯の白さと並んで悩んでいる方が多いのが歯並びでしょう。
特に近年、成長期に固い食品を食べる機会が減ったことから顎が未熟で歯が生えるスペースが狭くなり、歯並びが悪くなってしまうケースが目立ちます。
最近では成人してから歯の矯正をする、大人の歯列矯正を受診する方がとても多くなっています。
治療の対象になる悪い歯並びの代表的なものとして次の4タイプが挙げられます。
叢生(そうせい)
顎の奥行きが小さい日本人に最も多いタイプです。
歯の生えるスペースが狭い場合、歯が重なり合っていたり、ねじれて生えたりします。いわゆる「八重歯」と呼ばれるのは、糸切り歯(犬歯)が重なった状態です。
また、乳歯が永久歯の萌出よりもかなり早く抜けてしまったり、逆に遅くまで抜けなかったりすることも歯並びの乱れた叢生の原因になります。
開咬(かいこう)
歯をかみ合わせたとき奥歯は接しているのに前歯がしっかり組み合わず、隙間が空いてしまう症状です。
鏡を見て、歯をかみ合わせたとき、空き具合によっては舌が見えてしまいます。
上顎前突(じょうがくぜんとつ)
上の前歯が下の前歯よりも大きく前にせり出した、いわゆる「出っ歯」の状態です。
遺伝的な要因や、下唇を噛むクセ、口呼吸などの生活習慣の組み合わせが原因と考えられます。
下顎前突(ががくぜんとつ)
上顎前突とは反対に、下の前歯が上の前歯よりも前に出てしまう、いわゆる「受け口」の症状です。
上の歯が後ろに傾いていることや、下あごが前にずれていることが原因として挙げられます。
また、もともと歯並びがよくても、成人後に別の要因で歯並びが悪くなってしまうケースがあるので注意が必要です。
親知らず
親知らずが骨に埋まって横倒しになっている場合、横向きに(歯の頭の方に)生えようとして歯列を圧迫してしまい、徐々に全体の歯並びが悪くなってしまうことがあります。
親知らずが横転していると診断されたら、早めに抜歯したほうがいいでしょう。
歯周病
歯周病が悪化すると歯を支える顎の骨(歯槽骨)がボロボロに溶けてしまい、歯を支えられなくなって歯が動いてしまい歯並びが悪くなったり、歯が抜けてしまったりします。
歯が一本抜けると、その穴を埋めようと周りの歯が空いている方向へ傾いてきたり、上下でかみ合っていたもう片方の歯が、かみ合う相手を求めて移動してくることがあります。
歯の形
もうひとつの審美上の基準が歯の形です。
虫歯など、後天的ないろいろな要因で歯が欠けたり、すり減ってしまうことがあります。
歯ぎしり
歯ぎしりは睡眠中、強く噛みしめたり、ぎりぎりと噛んだまま歯を動かしたりする症状で、強いストレスやかみ合わせが原因だと考えられています。
歯ぎしりは睡眠中に生じる症状のため、誰かに指摘されない限り自覚がない場合が多いです。
上前歯の内側や下の前歯がすり減っている、朝起きるとあごに力が入って突っ張った感じがする場合、無自覚のうちに歯ぎしりを繰り返している可能性が高いでしょう。
確実な治療法がないのが現状ですが、歯並びを矯正したり、マウスピースをして寝るといった対処が一定の効果を上げています。
歯の欠損
転んだり、ぶつかったりして、歯に強い力が加わると歯が欠けることがあります。
欠けた断面で象牙質や神経が露出してしまうと、しみたり痛みが出たり、虫歯菌などの細菌に感染しやすくなります。
なるべく早く、歯科医院で対処してもらいましょう。
歯を綺麗にする治療法
歯を白くする方法
歯石除去
磨き残しが多く歯石がたまっている場合、この歯石を取り除くだけでもかなり口元の印象が良くなります。
歯石除去は、虫歯や歯周病、口臭の予防にもなります。歯医者さんで取り除いてもらいましょう。
ホワイトニング
ホワイトニングは特殊な薬剤を使って、歯の表面を白くする治療です。
神経が死んで、黒ずんでしまった歯の場合には漂白という方法があり、繰り返し治療するうちに徐々に白くすることが出来ます。
一方、詰め物や被せ物などの人工物は白くすることが出来ないので注意が必要です。
ホワイトニングは、歯科医院で濃い濃度の薬剤を塗布してもらうオフィスホワイトニングと、自宅で自分で行うホームホワイトニングに分けられます。
残念ながら、一度白くしたら一生そのままというわけではなく、色の濃い食品や喫煙習慣などによって色戻りしていくため、一定期間ごとに繰り返し行う必要があります。
オフィスホワイトニングは市販品では認められていない濃度の薬剤を使うことが出来るので即効性があり、比較的短期間で歯の白さを手に入れられることがメリットです。
一方、ホームホワイトニングは自分で行うため、歯の色戻りが気になったときにいつでも行えるということがメリットです。
ただし、どちらもやりすぎると知覚過敏を引き起こすため、頻度には注意が必要です。
被せ物の材料を変える
虫歯治療で保険が適用されるのは、いわゆる銀歯やプラスティックの被せ物です。
これらは色が濃く、目立ってしまいます。
自由診療になると費用負担は増しますが、ジルコニアやセラミック素材といった自然な白さを持つ被せ物に置き換えることで見た目を改善することが出来ます。
歯並びを綺麗にする方法
矯正治療
かつては子供がするものという印象が強かった歯列矯正ですが、透明なブラケットや歯の裏側に装着するブラケット、取り外しができるマウスピースタイプの器具など、目立たない器具が登場したことにより、治療を受ける大人の方も増加しています。
矯正器具を使って、歯に持続的に力をかけ続けることで、歯を支える歯槽骨の代謝を促して歯を少しづつ移動させていきます。
骨の代謝は思春期をピークとして、年齢とともに低下します。
若い方が短期間で矯正できるため、費用を優遇している歯科医院もあります。
矯正しようかどうか迷っているのなら、なるべく早めに歯医者さんに相談してみましょう。
被せ物治療
歯並びの程度によりますが、被せ物で短期間に歯並びを改善できる場合があります。
矯正をした方が良いのか、しっかりとかかりつけの歯医者さんに説明を受けた上で自分に合った治療法を選択しましょう
歯の形を綺麗にする方法
セラミッククラウン
透明感のある自然な白さを持った素材の被せ物をすることで、歯の形や色を綺麗に整えます。
1度目の施術で、被せ物(クラウン)をかぶせるための形に整え、型を取ります。
2度目の施術で、型から作ったクラウンをはめ込み微調整をして完了です。
歯の形や白さを自由に選ぶことができるため、周りの歯との調和がとりやすく、歯並びもよく見せることが出来ます。
また、抜けてしまった歯がある場合、両隣の歯を支えにして3つ連続したクラウンを装着することで、機能を回復させることが出来ます。(こういった治療をブリッジといいます。)
インプラント治療
インプラントは歯を失ったときに人口の歯根を顎の骨に埋め込む治療法です。
埋め込んだインプラントは、顎の骨と結合してしっかりと固定されるため、まるで自分の歯のような噛みごたえが期待でき、入れ歯から変更する人が増えています。
また、審美性を求めて、状態の悪い歯を抜歯してインプラント治療を行うことがあります。
上部構造(見えている歯の部分)の色や形を自由に調整できるので、セラミッククラウンと同様、周りの歯との調和がとりやすいというメリットがあります。
セラミッククラウンもインプラントも、元の歯の形によらず色・歯並び・歯の形を美しく整えることが出来ます。
しかし、自分の歯を削ったり抜いたりする場合もあるため、きちんと担当の歯医者さんと相談の上、よく考えてから決断するようにしましょう。
綺麗な歯を守るうえで欠かせない、予防歯科
今の状態から歯を綺麗にする方法についてご紹介しましたが、いつまでも美しい歯を守るためには、やはり日々のメンテナンスがなによりも重要です。
歯磨きは原則として1日3回。毎食後30分~1時間の間に行いましょう。
せっかく磨いても、すぐにお菓子を食べてしまっては元も子もありません。
常に何かを口に入れている『だらだら食べ』は、唾液による再石灰化を妨げて、どんどん虫歯になりやすい口内環境に近づけてしまいます。
そして、綺麗な歯を守ろうとする意識が高いあなたにぜひ受診してほしいのが、定期的な予防歯科。
専門家である歯医者さん、歯科衛生士さんにチェックしてもらうことで、虫歯や歯周病など様々な病気を早期に発見することが出来ます。
重症化すると著しく見た目を損ねたり、抜歯の可能性もあるこれらの病気ですが、初期のうちに対処できれば短期間に改善することが出来る可能性が高まります。
北欧スウェーデンでは1980年代から予防歯科が広く普及しました。
その結果、1973年には70歳で平均13.3本しか残っていなかった歯が、2003年には平均20.7本にまで増え、多くの人が歯を失わずに済むようになったことがわかります。
いつまでも健康的で綺麗な歯を保ちたいとお考えの方は、ぜひ予防歯科に力を入れている歯医者さんにご相談ください。
編集後記
編集後記では毎回、編集部のおすすめする全国の歯科医院さんをご紹介させて頂きます。
※本編とは直接関係ありません
丁寧なカウンセリングに基づいて、患者さんそれぞれが納得できる治療計画を、患者さんと歯科医師が一緒に立てることを重視していらっしゃいます。全ての治療ユニットにマイクロスコープが設置されている、治療設備の整った歯科医院さんです。