歯周病が進行すると骨が溶ける?
歯周病とは、細菌の感染によって引き起こされる炎症性の疾患で、歯の周りの歯ぐき(歯肉)や、歯を支える骨などが溶けてしまう病気です。
歯と歯茎の境目には、歯肉溝(歯周ポケット)という溝があり、正しいブラッシングを行えていない場合、その溝に汚れが溜まり、溜まった細菌が原因で歯周病が進行していきます。
そして歯周病はある日突然、重度の症状が出るのではなく、徐々に進行する病気です。
重度になってから慌てて治療するのではなく、早い段階から予防することが大切です。
まずは歯周病になるまでを段階ごとに簡単に解説します。
(1)正常な状態
- 歯肉の色がピンク色でキュッと引き締まっている
- 触ると硬い状態
- 歯の表面や歯と歯茎の境目などに歯垢や歯石がついていない
(2)歯肉炎
- 歯肉の色が赤く、丸みを帯びている
- 歯の表面、歯間に歯垢、歯石がついている
- ブラッシングをすると血が出る
(3)歯周炎
- 歯肉が腫れ、赤紫色になる
- 歯茎が下がり歯が長く見える
- 歯周ポケットが深くなる
- 歯を支えている歯槽骨が溶け始め、ぐらつき始める
このように段階を追って歯周病は進行していきますが、重度の歯周病になり歯を支える骨が溶けてしまった場合、口腔内をどれだけ綺麗にしても自然に溶けた骨が戻ることはありません。
溶けた骨を再生させることが出来る?
従来の歯周病治療では、歯が抜けてしまう前に、これ以上病気が進行しないように止める
だけで、本来の状態に戻すことはほとんど不可能でした。
しかし最近では歯周病により破壊された歯の支持組織を再生させ、歯をできるだけ元の健全な状態に戻す治療法があり、それを「再生療法」と言います。
再生療法の流れ
- 歯肉を切開し、歯周病で溶けて失ったの骨(骨吸収)の部分を明確にする
- 歯の根部分の清掃
- 綺麗にした歯の根の周りに組織誘導薬の注入
- 歯肉を元に戻し、半年〜1年の期間をかけて組織誘導剤により骨が再生し、体の一部になるのを待つ
このような流れで再生療法は行っていきます。
歯周再生療法にはどんな種類があるの?
再生療法に使用する歯周組織再生材料にもいくつか種類があります
(1)リグロス
遺伝子組換え技術により大腸菌を用いて製造したヒト塩基性線維芽細胞増殖 因子を有効成分とする 歯周組織再生剤です。
従来のものに比べて比較的新しい再生剤であり、保険適用となるので費用を3割負担で抑えられるのが特徴となります。
(2)エムドゲイン
幼若ブタの歯胚から抽出・精製したタンパク質分画、エナメルマトリックスデリバティブ(EMD)にプロピレングリコールアルギネート(PGA)を加えた歯周組織再生材料です。これまでも長期的に使われてきたもので安心して使うことができますが、保険適用ではない為、リグロスと比較した際に費用が高くなります。
(3)GTR法
GTR方では歯周組織再生材料は使用せず、歯周ポケット内部を清掃した後にメンブレンと呼ばれる人口膜を設置し、外から歯肉が入り込まないよう防御することで、メンブレンの下に歯周組織が再生するのを待つ方法です。
このように再生剤にも種類があり、それぞれ特徴があります。
中には症例によって、適応にならないこともある為、歯医者にて相談、診断をしてもらい、ご自身に一番あった治療を行っていくことが重要となります。
さいごに
今までは、進行してしまった歯周病に関して、諦めてきた部分を諦めなくてもいい方法が時代の進歩とともに出現してきました。
しかし保険で受けられる再生療法があるからと言って、歯周病の進行を放置してはいけません。とくに歯周病は初期には自覚症状が無く進行する病気なので、腫れや出血、痛みなどの症状が出た時にはすでにかなり進行している場合も多くあります。
セルフケアを行うことによって日常的にご自身の口の中を守ることが一番重要となります。
また、なるべく症状が無いうちから定期的な予防・検診を継続すること、定期検診が難しくても、少しでも気になる点があれば、出来るだけ早めに歯科医院に診てもらうよう心掛けましょう。
編集後記
編集後記では毎回、編集部のおすすめする全国の歯科医院さんをご紹介させて頂きます。
※本編とは直接関係ありません
症状・進行度に応じた適切な歯周病治療に力を入れている医院さんです。一度失った骨や周囲の歯周組織の再生療法にも対応されています。
その他、歯を失った方へのインプラント治療や、より自然な白さでしっかり噛める審美補綴、ご自身の歯を白くするホワイトニングなど幅広い歯科診療を提供されています。