精密歯科治療の味方、ラバーダムとは?
ラバーダム(ラバーダム防湿)とは、治療に入る前に歯に薄いゴムのシートを張る処置のことです。治療する歯だけを露出させることで、治療中に唾液や細菌が入るのを防ぐことができます。
ラバーダムは主に根管治療(歯の根っこの部分の治療)で使用されます。この治療は、再感染を起こしてしまう確率が治療した歯の約50%と非常に高く、数年後に痛みが出て再び治療が必要になるケースが少なくありません。ラバーダムを用いることで治療の成功率をおよそ90%まで高めることができるため、処置前のラバーダムが強く推奨されています。
また、虫歯治療にも使われます。削った歯を詰める際に細菌が入り込んでしまうと同じところが再び虫歯になる原因となりますので、無菌的処置を行う方がより再発率が低くなります。
以上のように、処置前のラバーダムは非常に重要な処置とされています。
ラバーダム防湿のメリットとデメリットは?
メリット
治療の成功率が上がる
唾液には数千億もの菌が含まれており、ラバーダムで唾液が入らないようにすることで、再感染のリスクを減らし虫歯の治療や根管治療をした歯が再び感染を起こす確率を下げることができます。
治療が安全に行える
歯科で使用する器具は細かいものが多く、誤って落下させてしまった場合、患者さんが飲み込んでしまう可能性もあります。万が一落下してしまっても、ラバーダムを使用していれば器具は喉の方へ落ちていかず、誤飲の心配はほとんどありません。
また、歯ぐきや粘膜には刺激となる薬剤も、歯ぐきに触れず安全に使用することができます。
施術時の視野を広く保てる
お口の中は狭く、ライトを照らしたり器具を入れたりするために舌や頬を押さえて治療をすることが多くあります。その役割をラバーダムが補ってくれるので、施術に余裕ができ、治療の精度も上がります。
デメリット
患者さんに負担がかかる
ラバーダムをしている間は口を閉じることができません。また、金具で歯を挟むので、締めつけられる感じが苦手だとおっしゃる方もいます。
一部使用できない人がいる
ラバーダムのシートにラテックスを使用していることが多いため、ラテックスにアレルギーのある方には使用できません。加えて、シートで口を覆ってしまうので鼻呼吸ができない方にも向いていません。
なぜ日本ではラバーダム防湿が普及しないの?
メリットが多いラバーダムですが、日本の一般歯科での使用率はわずか5.4%と非常に低いのが現状です。
それにはいくつか理由がありますが、最も大きな理由のひとつが”採算が合わないため”なのです。
日本の歯科医院の保険診療率は85~90%で、現在多くの歯科医院がラバーダムを保険診療のなかで用いています。ところが、ラバーダムは保険点数請求の決まりの中で算定することができないのが現状です。
ラバーダム処置には使い捨てのゴム製シートや滅菌された金具、フレームなど多くの器具が用いられ、これらを患者さんごとに廃棄や滅菌する必要があります。医院の利益にすることができないのに、コストだけがかかってしまうのです。
また、多くの患者さんを抱える医院も多く、ほとんどの医院が毎日の診療をできるだけ効率よく進められるよう工夫を凝らしています。そんな中で手順が多く手間のかかるラバーダムを患者さんごとに行っていると、治療が時間内に終了しなかったり、診療に遅れが出てしまったりして、日々の診療の支障となる可能性もあります。
さいごに
ラバーダムは治療の予後を左右する重要な処置ではありますが、現在日本ではほとんど普及していません。また、ラバーダムを用いて診療を行っても再発の可能性がゼロになるわけではありません。
最も重要なのは、まず自分の歯を虫歯にしないこと。
痛みや違和感が出てから医院に出向くのではなく、定期的に歯科医院での検診を受け、歯磨き指導やクリーニングを受けることによって、虫歯や歯周病の早期発見や早期治療を行うことができます。 まずは歯科医院でチェックを受けてみてはいかがでしょうか。